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大学院修了

この度、グラーツ芸術大学(Kunstuniversitaet Graz) 大学院の合唱指揮科を修了しましたことを、ご報告させていただきます。

留学を開始してから6年、その間にウィーン国立音大からグラーツに転学するなどの展開もあり、あっという間だった気持ちもありますし、一方でやっと辿り着いた卒業、という想いもあります。
さらに言えば、私は日本で音大の声楽科を卒業していますので、そこから数えると10年に渡る学生時代!いやぁ、よく学んだ・・・笑

さて、今後ヨーロッパの音大の合唱指揮科に留学を・・・と考える人も少しずつ増えてくるのではないかと思うので、そういった方々への情報という意味も含めて、つい先日行われた卒業試験について書こうと思います。

 

グラーツでの卒業試験は大きく分けて3つの課題から成ります。

一つ目はコンサートでの演奏で、大学で学期毎に行われている指揮科合唱団の演奏会の中で指揮をします。私は演奏曲としてドヴォルジャーク作曲・ヤナーチェク編曲の『6つのモラヴィア民謡』という作品を与えられ、初回稽古から本番演奏まで一人で指揮し、その演奏が評価される、というものです。(当然のように聞こえるかと思いますが、通常指揮科合唱団の稽古は授業の一環として行われる為、複数の学生が稽古を担当し、本番直前にコンサートでの指揮者が指名される、という形を取ります。)

二つ目は卒業論文及び卒業発表です。グラーツの大学院では、80ページの論文執筆、もしくは10ページの執筆+30分のレクチャーの二つの形式から選択することができ、私はレクチャー形式で、『Hugo Distler: Totentanz、作品解釈と指揮の観点からの演奏実践』というタイトルの発表を行いました。レクチャーでは実際にピアノを弾いたり歌ったり、合唱団を指揮したり、という演奏を交えて自身の楽曲に対するアプローチをプレゼンします。

三つ目は実技試験で、コレペティと合唱指揮の二つが課されます。
コレペティというのはオペラのシーンをピアノで弾きながら歌う、というもので、歌劇場でコレペティトールとして働く人材を育てる為の科なのですが、グラーツでは指揮者の大切な能力として、合唱指揮科の学生に対してもコレペティが専修科目として課されています。私は試験で『魔笛』の中から五重唱と、『メリー・ウィドウ』の一幕フィナーレを弾き歌いしたのですが、私はピアニストではないので、これが本当に大変で、夏中ずっとピアノを練習していた気がします。。。
そして一番のメインとも言える合唱指揮は、まず課題曲として教授と相談して決めた9作品を用意します。この9作品というのは、たとえば、天地創造の一幕、とかメサイアの合唱曲全て、といったものがそれぞれ1作品なので、9作品合わせると演奏時間にして数時間分、かなりの分量があります。試験ではその全てを演奏するのではなく、試験官の教授から、「では、天地創造のレチタティーヴォを歌いなさい」「メサイアのこの合唱曲をピアノを自分で弾きながら合唱団に稽古をつけなさい」「ブリテンの春の交響曲の合唱を稽古するとして、どういった問題が想定されますか」など、様々な角度から楽曲の理解と、指揮、指導の能力を問う質問が投げかけられます。
試験官は信頼している教授、そしてずっと一緒に勉強してきた仲間が合唱団として歌ってくれる環境とは言え、箱を開けるまで何が出てくるかわからない、とても緊張する試験です。
このページのトップ画像がこの試験を共にした楽譜たちですが、書き込みに使った赤青鉛筆も、この夏ですっかり小さくなってしまいました。

そして以上の三つに全て合格すると無事に卒業!という訳です。

こうして書き出してみると、なんだか大したことを成し遂げたような気持ちにもなりますが、グラーツの卒業試験は他の大学に比べると割と優しいんではないかという気がします。ウィーンの試験はもっと大変だった・・・。

いずれにせよ、留学を始める時に、大学院まで修了する、というのを一つの目標に掲げていたので、無事に合格することが出来、心から嬉しく思っています!

試験の後は、クラスメートたちとパーティー!
グラーツ芸術大学の合唱指揮科は、教授もクラスメートも本当に素敵な人たちばかりでした。お別れが寂しいです。
パーティーの時には友達がサプライズでこんなものを用意してくれました!
マスタータニ(笑)

 

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