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合唱指揮者 谷 郁 オフィシャルウェブサイト

夏休みの話

今年の夏も信じられないくらい暑い日が続いていますが、お元気にお過ごしでしょうか。

さて、夏休みといえば…
私は6年間オーストリアに留学していたのですが、あちらの大学の夏休みは7月から9月までの3ヶ月間と非常に長いです。その期間中に帰省したり、旅行したり、アルバイトをしたり、学生の過ごし方は様々ですが、音大生特有の過ごし方として「マスタークラス受講」というのがあります。夏季にはヨーロッパ各地で3日から1週間程度の泊まり込みでのマスタークラスがたくさん開催されていて、私は教授から「ひと夏で3つは受講しなさい」と言われていました。クラスメートたちは「いやいや、3つは無理でしょw」という雰囲気でしたが、私は超勤勉学生だったので、本当に毎年2-3個のマスタークラスを渡り歩いていました。
大学では基本的に特定の先生から特定の流儀を習うわけなので、マスタークラスを通してそれとは全く違う考え方に出会い、尊敬できる指揮者に出会い、仲間に出会い、刺激を受け、戸惑い…いろんなことを経験できるとても大切な時間だったと思っています。
もちろん夏休みの3ヶ月ずっと勉強だけしているわけではなく、友達と旅行したり、日がな一日ドナウ川で泳いだり、昼からビールを飲んだり、楽しい時間もたくさん過ごしました。

そんな思い出があるため、私は今でも夏はなるべくインプットの期間にしたいと思っています。私が主宰する合唱団は8月は夏休みにしていて、自由に動き回れる時間を作らせてもらっています。(日本の夏は暑すぎてやってられない、というのもある)
希望としては毎年ヨーロッパに行きたいところですが、経済的にも、日本での演奏活動との兼ね合い的にもなかなかそうはいかないので、今年は日本でいろんなところを訪れようと思った結果、8月だけで静岡、大阪、福岡、岩手など本当に飛び回ることになり、月の半分以上家を空けていました。(ちょっとやりすぎた)

そんな充実した8月の中でも特に印象的だったのは、東京で開催された安積道也さんによる合唱指揮マスタークラスの企画運営と、福岡で開催された同氏のメサイアのコンサートに歌い手として参加したことです。
安積さんには留学中からお世話になっており、それこそ毎夏訪れていたモルテン・シュルト=イェンセン氏のマスタークラスを通じて出会ったのですが、私が日本に帰国し、安積さんがドイツに戻られた後も1年に一度安積さんの指揮に触れることで自分の指揮を見つめ直す機会になり、もっともっと自己研鑽をしていかなくてはならないと思わせてくれるかけがえのない時間になっています。

講座の詳細についてはここに書くつもりはないので、気になる方はぜひ動画受講をしてみてください👇きっと来年は参加したくなるはず(笑)
https://choruscompany.com/seminar/250815azumi/

私が指揮者として強い影響を受けている方は何人かいて、合唱指揮を本格的に学びたいと思うきっかけをくれた花井哲郎さん、カンタートで惚れ込んで絶対この人の元で合唱指揮を学ぶと決意させてくれたエルヴィン・オルトナーさん、私に指揮者だけでなく合唱指導者としてのスキルを叩き込んでくれたヨハネス・プリンツさん、合唱指揮に特化した指揮法というものの考え方に出会わせてくれたモルテン・シュルト=イェンセンさん。この4名は永遠に目指し続ける対象ではありながらも、人間としてのタイプが自分とは違いすぎて、「すごい…でも一生かかってもああはなれない…」みたいな気持ちがあるのですが、安積さんは、私が歩いているのと同じ道の、はるか先にいる先輩、という気持ちで背中を見ています。(烏滸がましいかもしれませんが)
指揮法、リハーサル法、音楽性、知識、人間力、どこを取っても欠点らしきものが見当たらず、私自身は一応リハーサルが得意な指揮者を自負しているのですが、どうやらその一点すら追いついておらず、歩むべき道の長さに気が遠くなります。

自分自身の合唱指揮者としての「いま」を考えた時に、おそらく日本の「合唱界」と呼ばれる世界ではそれなりに知っていただけていて、両手で抱えきれないほどのお仕事をいただき、自分のやりたい曲を演奏できる場があって、衣食住に困らない暮らしをしていて、まさに留学中に思い描いていた夢のような日々を送っています。でも、音楽家として現状に満足して上を目指すことをやめてしまったら、そこに留まり続けるどころか、その先には衰退か堕落しかないのだろうという小さな焦りが心の中にあります。
もちろん指揮者としてやりたいことはまだいくらでもあって、自分の合唱団をヨーロッパに連れて行きたいし、指揮者として海外からお声がかかるくらいの存在になりたいし、演奏したい曲もまだまだたくさんある。
そういった目標を叶えるためにも、今自分が立っている場所をしっかり弁えて、そこから踏み外すことなく、同時にしっかり両手を伸ばして掴めるチャンスを逃さないようにステップアップし続けることの大切さを、改めて感じることができた暑い夏でした。

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