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initium 3rd concert

主宰兼指揮者を務めている合唱団vocalconsort initium の3rd concertが昨日終演しました!

平日にも関わらずほぼ満席となる人数のお客様様にご来場頂き、素晴らしい音楽を共有して頂けたことを嬉しく思っています。

今回の演奏会は「女流作曲家の軌跡」と題し、中世から現代までの女性作曲家による作品をお聴きいただきました。
initium としては初の新作委嘱も行い、また日本初演の楽曲も多く、指揮者と合唱団と作曲家とが一丸となって音楽を作り上げた、という感覚の強い演奏会となりました。

今回のプログラムのなかで私が指揮したのは、まずFanny Mendelssohn-HenselとClara Schumannという知名度の高い二人のドイツ人作曲家の作品です。
自然で奇をてらわず、優しく美しい二作品なのですが、裏話をすると、難易度の高くない曲の稽古というのは限られた稽古時間の中だと後回しにせざるを得ず、歌いこまれていない状態で本番を迎える事が少なくありません。
今回も決して多くの時間をかけられた訳ではないのですが、initium メンバーのアンサンブル力と集中力の高さに助けられ、本番では言葉とフレーズがとても自然に流れ、指揮者として幸せな瞬間を何度も味あわせてもらいました。

次にプログラムの最後に演奏したElisabeth Naskeの楽曲です。
演奏時間が20分ちかい今回一番の大作だったのですが、私が留学時代にシェーンベルクコアの団員としてこの楽曲を初演したご縁があり、印象が強く残っていたため今回のプログラムに選びました。
もともと思い入れのある曲ということもありますし、演奏会でこの曲の前に柳嶋指揮で演奏されたAlma Mahlerの好演に触発された感もあって、本番での演奏は私にしては珍しいくらい楽曲の世界に没頭したものになりました。(私は割と冷静かつ客観的に指揮をする事が多いので)
お客様からの好評も多く頂き、まだ殆ど知られていないこの名曲の魅力を伝えられたのではないかと思っています。

そして最後に外すことの出来ない話題は、新作委嘱と初演を行った成清翠作曲「ささやきュビズム」についてです。
そもそもこの委嘱は、成清さんが私の大学時代の親しい友人だったこと(一緒にサークル活動をしてました)、initiumの中にも私たちの同窓生が多くいることから話が盛り上がり実現したものなのですが、委嘱というのは、その作曲家を信頼し、その作風が好きだからこそお願いするものではありますが、実際のところ何が出来上がってくるかわからないうちに演奏することを決断しなくてはならない、という怖さがあります。
今回は「24名程度の合唱団がアカペラで演奏できる10分以内の作品」というざくっとした依頼を出したのですが、成清さんはその注文にしっかり応えて、24人24パートという楽曲を書いてくれたわけです(笑)
決して複雑怪奇な曲ではないのですが、24パートで音を繋いでいく技術的、また精神的な難しさから稽古はかなり難航しました。
本番も完璧な演奏が出来たとまでは言えませんが(そもそも完璧な演奏とは・・・)お客様からはこの楽曲が最も印象に残ったというお声が多く、新しい魅力的な合唱曲を生み出すことが出来て、私たちの初委嘱は成功に終わったと言えると思います。なにより私を含めてメンバー一同この曲がとても好きになりました。
成清さん、どうもありがとう!

initiumは今年まだまだ活動します!どうぞご期待ください!

vocalconsort initium 3rd concert 〜女流作曲家の軌跡〜

演奏プログラム

Hildegard von Bingen (1098-1179) :
O eterne Deus 《おお永遠なる主》

Marguerite d’Autriche (1480-1530) :
Se jous souspire et plaingz / Ecce iterum novus dolor accedit
《こうして溜息をつき、嘆く / 新たなる悲しみに備えよ》

たかの 舞俐 : Two pieces for Voices 《声のための 2 つの曲》(日本初演)
1. Inori
2. Song of the Pig-Mary (Paradox Love Song)

成清 翠 :ささやきュビズム(vocalconsort initium 2019 年委嘱作品)(初演)

堅田 優衣:Ave Maria – 涙とともにある人に

Clara Schumann (1819-1896) :
3 gemischte Chöre 《3 つの混声合唱曲》
1.. Abend feier in Venedig 《ヴェネツィアの昨夜の祝い》
2. Vorwärts 《前へ》
3. Gondoliera 《ゴンドラ漕ぎ》

Fanny Mendelssohn-Hensel (1805-1847) :Gartenlieder 《園の歌》より
1. Hörst du nicht die Bäume rauschen 《木々がざわめくのが聞こえないかい》
2. Schöne Fremde 《美しい異郷》
5. Abendlich schon rauscht der Wald 《森が夕暮れてざわめく》

Alma Maria Mahler-Werfel (1879-1964) / Clytus Gottwald (1925-) :

3 frühe Lieder 《3 つの初期の歌》

1. Die stille Stadt 《静かな街》
2. Laue Sommernacht 《なまあたたかい夏の夜》
3. Bei dir ist es traut 《きみのそばに居るのは心地よい》

Elisabeth Naske:

5 Vertonungen nach gedichten von Christine Lavant
《クリスティーヌ・ラヴァントの詩による 5 つの曲》
1. Mir ist es oft 《私は度々》
2. So eine wildfremde Sonne 《まったく見ず知らずの太陽》
3. Für meine Mutter 《母のために》
4. Durchgegangen ist mein Steppenpferdchen 《通り過ぎたのは私の野生の仔馬》
5. Seit heute 《今日から》

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