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Mu Project

あっという間に1週間以上経ってしまったのですが、9月23日にMu Projectの客演指揮者として、全日本合唱コンクールの都大会に出場しました。

毎年身辺がにぎやかになるこのコンクールですが、私が出場するのは、おそらくCANTUS ANIMAEの団員として歌った2011年以来。私の記憶が正しければ、9月に都大会で金賞をいただいて全国に進むことが決まり、でも私は10月から留学する予定になっていたため、途中離脱となったのでした。(現在はCAのアンサンブルトレーナーとして引き続きご一緒しています^^)

Mu Project(ムウプロ)は特定の指揮者を置かず、この数年は年にひとりの客演指揮者を迎えてコンクールをひとつの発表の場として精力的に活動をされている合唱団です。一昨年はCAの指揮者の雨森先生、去年はCAでいつもピアノを弾いてくださっている平林先生を客演に迎えられているので、まさにCAファミリーとの強い結びつきがある団でもあります。(たぶんそういう理由で人選されているわけではないと思いますが笑)

ムウプロの強みのひとつはそのパワフルでまっすぐな歌声で、すでに高い評価を受けています。しかし今回客演の依頼をいただいた時に、パワフルなだけじゃない歌唱表現がしたいというお話しがあり、さらにこれまでに挑戦したことがないドイツロマン派の作品にも取り組んでみたいということでした。
そこから相談を重ね、今回コンクールの自由曲として選んだのが次の二曲です。

武満徹:第2ヴォカリーズ(風の馬より)
Max Reger: Husarendurchmarsch(マックス・レーガー:軽騎兵の行進)

『第2ヴォカリーズ』は、一人ひとりの声を響かせると言うよりも、複雑な和音を歌う合唱団全体が一つの楽器として響き、そのバランス感覚を保ちながら自由にうねる演奏を目指していました。高音でのppや、音域が上下に広がりながらも母音、音色、音量を全パートで揃えないといけないところなど、テクニック的にかなり高いものが要求されます。

『Husarendurchmarsch』はReger(レーガー)の作品で、ドイツロマン派の男声合唱をやるなら絶対に避けては通れないような作曲家なのですが、和声が非常に複雑で難しく(でもクラスターではないので、音を外すとバレる)、基本4声部ですがdivisiが重なるところは7パートほどに分かれ、テンポも速くて言葉数が多いなど、こちらもかなり難易度の高い、でもとても音楽的密度の濃いすばらしい作品です。

ムウプロのメンバーにとっては新たな挑戦の詰まったこの二曲を演奏するために、コンクールだけでなくコンサートにも1ステージ出させてもらい、シューベルトやブラームスの作品を歌ったりしてこの半年間、一生懸命に作品に向き合ってきました。自分たちの慣れた言語、慣れた発声で歌うことができないというのは、歌い手にとって大きなストレスだと思います。合唱団に限らず声楽家でもそうだと思いますが、自分という楽器をめいいっぱい鳴らしてフルパワー・フルボリュームで演奏すること、トレーニングすることも当然必要ですが、どうしても音色が一色になりやすく、音程含めコントロールが行き届かないことが多くなります。だからこそその音色の使い道、使う頻度には充分注意しないといけないと思うのですが、でもその感触を知ってしまうと、小さい音量で演奏することを不安にあるいは物足りなく感じてしまったりもするんですよね…
でも、極限まで音量を落としたppの音色の魅力、すばらしいボリュームが鳴る楽器(声)を持った人が余裕を持って歌うからこそのやわらかいフォルテなど、新しい「音色」を一つでも多く持ってもらいたいのです。
今回ムウプロのみなさんには、そのあたりでかなり自分と戦ってもらったのではないでしょうか。(練習ではよく「フォルテ禁止!!」と言ってました笑)

慣れてきた歌い方から方向転換するには半年という期間は当然短すぎます。それでも、ムウプロのみなさんは首を傾げながらだったかもしれませんが、一生懸命に実践しようとがんばってくれました。
本番での演奏は、新たな挑戦尽くしである背景を考えれば、「よくぞここまで…!」という気持ちが一番なのですが、「もっと時間があればもっと出来たかも!」という気持ちも当然ありますし、「練習でもっとよいアプローチができたのでは」とか「本当に選曲はベストだったのか」とか、指揮者としていろいろ思うことはあります。それでもみんなで一緒に頭を抱えながら(笑)曲に向き合う時間はとても楽しく、本番直後にSNSにも書いたのですが、楽しい夏休みが終わってしまったような、今はそんな寂しい気持ちでいます。

でもお互いまだまだ若いので、この先音楽を続けていく限りいろんなところで交わり続けるのだと思います。この夏のひと時を糧に、お互いさらに成長して、またどこかでご一緒できることを楽しみにしています!
また一緒に遊ぼう!

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