11/22に行われたvocalconsort initium ; 6th concert、そして11/23の合唱指揮マスタークラスから早くも2週間が経ってしまいました。
時間が出来たら落ち着いて振り返ろうと思っていましたが、なかなか余裕がないまま、このままだとinitiumの次のプロジェクトが始まってしまうし、別のコンサートも控えているということで、移動時間にコツコツ書き進めています。
initiumは、私と柳嶋さんが留学中に、日本で自分達が一番やりたいことを実現出来る合唱団を作ろう、と言って仲間を募り活動を始めた合唱団です。だからこそinitiumの活動はいつでも自分達にとって特別なもので、多くの気付きと、刺激と、喜びと、内省をもたらしてくれますが、今回はなんと言ってもモルテン・シュルト=イェンセン氏を客演指揮にお招き出来たことが大きなトピックでした。
モルテン氏との出会いや、私が彼から受けた影響については別の場所で書いているので割愛しますが
(よろしければnoteをお読みください↓)
https://note.com/vcinitium/n/n218fddf29b04
いつか彼にinitium を振ってほしいという願いはありつつも、initium は音楽家の常(?)でいつでもお金がないので(涙)なかなか実現に踏み出すことは出来ませんでした。
そんな時に、モルテンさんが全日本合唱コンクールの審査員を引き受けるという話が上がり、共通の知り合いを通じて日本で一緒に何か出来ないかというお話をいただき、それならぜひinitium を振ってほしい!そして彼の指揮をより多くの方に知っていただくためにマスタークラスも開きたい!ということで、コーラスカンパニーの服部さんにご相談して一緒に企画をさせていただきました。
招聘に至るまでには紆余曲折ありましたし、戦争やコロナの影響も大きく、とにかくモルテンさんが無事に来日してくれることを願う日々だったので、ホテルのロビーで彼の姿を見た時には本当に嬉しかったです。
演奏会までのモルテンさんとinitiumのリハーサルの時間は、本番前日リハの3時間と、当日ステージリハの1時間のみ。
彼の凄さは、100%指揮を見てこそ感じられるものだということはわかっていたので、谷柳嶋が事前に行ったinitiumのリハーサルの中でもテンポを変えたり表現を変えたり、限られた時間の中で少しでも歌い込む工夫はしたつもりですが、それでも実際にモルテンさんの指揮で歌うことは、initiumメンバーにとっては想定の範囲を超えた衝撃的な体験だったのではないかと思います。
彼の指揮は、指揮者の動きと歌い手の身体とが直接繋がって操られてしまうような不思議な感覚があり、でもそれは楽譜に齧り付きながら視界の隅で動きを捉えるような指揮の見方では成立しないものです。
プロの歌い手は、指揮を見て歌う経験は多い一方で、自ら音楽を発信して自発的に音楽の流れを作っていくことに慣れていたりもするので、指揮に完全に身を委ねて歌うというのはある意味で新感覚かもしれません。
そんな中でinitiumメンバーも必死に格闘しながらのリハーサルとなりましたが、モルテンさんは限られた時間の中でも、求めるサウンドが得られない時や子音のタイミングが合わないところなど、何度も何度も首を振りながら繰り返し根気強く練習して少しずつ合唱団との繋がりを作っていってくれました。
私自身、仕事として合唱指揮をする中で、「このくらい合っていればいいだろう」という妥協を、どれだけしてしまっているんだろうと身につまされる思いでした。それはある場面においては必要な妥協だとも思っていますが、妥協癖が付いているかもしれない、と。
少しでも違うと思ったら納得いくまで理想の音を追求する。その姿勢を思い出させてくれました。
(リハーサルの後でモルテンさんが「自分は厳しくやり過ぎだろうか…?」と気にされていたのはここだけの話)
そしてコンサート本番では、これはまさにモルテンさんを呼ぶにあたって期待していたことなのですが、彼の指揮で歌うinitium のサウンドが全く違うことを実感していただけたのではないでしょうか?
私自身、initium はこんな音も出せるのか!という発見がたくさんありました。
これは「指揮者が持つサウンドの違い」というベクトルを差し引いたとしても自分の力の無さの吐露でもあり、正直モルテン・シュルト=イェンセンという指揮者があまりに遠い場所にいる事実に落ち込む気持ちもあります。しかし指揮者にはこれだけの影響力があるという事実を思い出させてくれたこと、そしてinitium のメンバーがそれを知ってくれたことがとても嬉しいです。
コンサートを聴いてくださったお客様から「モルテンさんの指揮の時は何でこんな音が鳴るんだろう?」「どんな魔法?」という声が聞こえてきましたが、その答えの一端は、翌日のマスタークラスで見られたのではないかと思います。
モルテンさんの指揮は魔法ではなくテクニックです。もちろん彼の音楽性があってこそ生きるテクニックなので、表面的に振り付けだけを真似だけしても何の意味もないことですが、彼の凄さは自分のテクニックを説明出来て人に教えられるところです。そしてもうひとつは指揮者(受講生)が持っているサウンドを最大限に引き出してくれることではないかと思っています。
私自身、昔彼のマスタークラスに参加した時に、今まで自分の指揮では得ることがなかった豊かなフォルテのサウンドが合唱団から出てきたことに驚いたことがあります。それまでは、自分の小さな身体のせいだと思っていましたが、(ハンデはあるにせよ)むしろ身体の使い方問題でした。
今回は6人の指揮者にマスタークラスを受講していただきましたが、それぞれがそれぞれの発見をして、自分の指揮の新たな可能性に気付いてくれたのではないかと思っています。
受講生がうまく振れずにもがいている様子、そしてうまくいった時の嬉しそうな顔を見て、通訳しながら私も数年前を思い出していました。
聴講のみなさんも同じように一喜一憂しながら、またご自分の体験と重ね合わせてご覧いただいたのではないでしょうか。
さて、長くなりましたが、そんなコンサートとマスタークラスの様子は現在も配信でご覧いただけます。コンサートの方は今週末(12/11)が公開期限となっていますので、お急ぎください!!
vocalconsort initium ; 6th concert 配信
購入・視聴期限 12/11(日)23:59
https://twitcasting.tv/vcinitium/shopcart/178874
モルテン・シュルト=イェンセン合唱指揮マスタークラス動画聴講
申込期限12/31 視聴期限1/31
https://choruscompany.com/221123morten/
PS
モルテンさんとの時間があまりに濃すぎて書き忘れてしまいましたが、コンサートでは私も3曲指揮をしました!特にシェーンベルク作曲の地上の平和は、留学時代に何度も歌った大切な曲で、いつか必ず演奏したいと思っていたので本番はかなり熱くなってしまいました…。心のこもった良い演奏になったと思うので、ぜひそちらも注目してみてください!